台所のお守り
私が物心ついた頃でしょうか、その頃から我が家には、
赤い木の柄がついた“フライ返し”がありました。
満州から引き揚げ、一から暮らしを築いていった母が買い求めたものでしょう。
道具を大切に扱う母でしたので、形見として私の手元にあり今も使い続けています。
形がなんとも可愛く、そればかりか、取手とフライ返しの部分を支えている鋼(ハガネ)の確かなことといったら。
60年以上たった今もビクともしません。この“赤い柄のフライ返し”は不思議なことに、
手にする度に『台所のお守り』のように感じるのです。
思ってみると暮らしのあちこちにそんな『お守り』が存在して、
見守ってくれているような気がします。
そうそう、時々足元に顔を出すヤモリにも同じ感情が湧き、愛着を感じています。
(イッコウ)